扼 殺

□4月1日の虚言
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「ネウロなんて大嫌い。」

精一杯の笑顔を作って、吐き捨てた。
今日がエイプリルフールだとこの魔人が知っているかはわからないが、この嘘は今日しか言えないと思い、口にした。
これでネウロが「わかった別れよう」と突き放してくれたらいいのに。
ネウロは感情のこもっていない愛の言葉を、何度も囁く。
だけど言われるたび、愛されていないことを実感するのだ。
それが酷く、痛かった。


「昨日は愛してると言っていたが?」

「女心と秋の空は変わりやすいのよ。」

「なんだそれは…。」

「ことわざよ、知らない?」

「我が輩が貴様等人間のくだらん文化など知るわけがなかろう。」


ネウロの表情は変わらない。
むしろ呆れている。
ネウロの言葉が、あたしの胸に突き刺さる。


「貴様が我が輩を嫌いになって、それがどうしたというのだ。」

「ショックじゃない?」

「意味がわからんな。」


ショック、そんなものこの目の前の魔人が受けるわけないとわかっているのに、口をついて出た言葉。
今のネウロの表情は、愛想を尽かした顔だ。
あたしの笑顔はとうとう崩れてしまった。

 
「そうだよね…。いつだってこんな気持ちなのはあたしだけだもんね。」


どうしてこんな我が儘な事を言ってしまうのだろう。
あたしは今凄く嫌な女だ。
ネウロがあたしのことを愛せないことなどわかっていた。
そんな感情、持ち合わせていないことは。


「何と言えば貴様は満足するのだ。」

「…ッ言葉なんていらないよ。」


愛の言葉なんていらない。
あたしはネウロに抱き締めて欲しいし、キスだってしたいと思うよ。
全部棄ててでもそばに居たいよ。


「好きだ。」

「…嘘つき。」


なのにどうして。


「そうだ。今日エイプリルフールだもんね。」


どうして、好きだなんて言うのだ。


「大嫌いなんて嘘だよ、だけど、ねぇネウロ…あたしもう疲れちゃったよ。」


いっそのこと貴様など愛していないと、そう言ってくれたなら。
突き放してくれたなら、貴方から離れられるのに。


(好きだというその一言が、)
(いつもあたしを捉えて離さない)



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