禁 殺
□刑事と不良の恋物語
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刑事な貴方と不良なあたしと、普通なら追って追われる立場のあたし達が今、恋愛でのいたちごっこをしているだなんて、物凄く笑える話の他ならない。
事の始まりは一ヶ月前。
朝10時過ぎ、コンビニに向かって歩いていた時だ。
身に纏うのは制服、左手に鞄、右手に煙草、今日はとても上手く巻けたと上機嫌の髪を揺らしながら、鼻歌交じりにローファーをコンクリートに叩き付けていた。
「ちょっと、君。」
音もテンションも低い声が真後ろから聞こえる。
あたしがこの時ここで立ち止まらなかったら、運命は変わってたのかな。
「学生さん、だよね?」
吹かしていた煙草を消して、あたしがとても気に入ってる金魚型の携帯灰皿の中へ。
笑顔で振り向けばベージュのスーツ姿、そして煙草をくわえた男が立っていた。
「学校は?」
「今日休みなんです。」
「…休んだんでしょ?」
「そうとも言う…。」
確かに今あたしがいるのは学校と正反対のコンビニ前だし、サボってはいたけど、四時間目から学校は行くつもりだった。
でもこれじゃ行けそうにない。
煙草吸ってた所、こんなにバッチリ見られてたら逃げることなんて出来ないだろうし。
「とりあえずさ、それ、貸してくれない?」
「は、い?」
「その金魚。灰皿でしょ?」
灰皿落としちゃったんだよね、何て言って苦笑いしているが、あたしは固まってしまって動けなかった。
この人、警察、じゃない、の、か?
「…駄目?」
「あ、いえ…使ってください。」
「ありがとう。」
「いや、ってゆうか、貴方刑事さんじゃないんですか?」
「あぁ、一応ね。俺は笹塚衛士。よろしく。」
間延びした返事に気が抜けてしまった。
立ちっぱなしも疲れるし、どっか座れる所行かない?なんてナンパみたいなことを真顔で言う目の前の刑事に、あたしは、それならおいしい珈琲のお店知ってますけど、と答えることしか出来なかった。
(あたしはカフェオレしか飲めないのだけれど)
刑事な貴方と不良なあたしの、そんな、ちょっとした、運命の、出逢い。
(そしてひとつの恋のはじまり)
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(さながらそれは赤い金魚のような)