Present

□No.15951御礼。マチ様へ
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誰よりも懐かれている自覚はあったから、あいつに好きだと言われた時は変に納得したもんだった。ああ、なるほど。そうだったのかと。

俺があいつを気に入ってるのは確かだった。だが、今まで弟分として見てきた奴に、いきなり告白されたのだ。それなりに驚いた。嫌悪の対象にならなかったのは何といっても奴の言う「好き」が憧憬を交えたものなのか判別がつきにくかったからであり、また実際「そういう関係」になった処で、俺らにさしたる変化が見られなかったからだ。

呑んだ後、同じベッドで目が覚めるのは今までもよくあったことだ。夜中にあいつが俺の部屋に勝手に入って、あまつさえ俺より先に俺のベッドを占領して寝てるのなんか慣れたものだったし、任務時以外であいつが俺の部屋に入り浸るのもいつものことだった。

提案された「恋人」という名称を、特に断る理由も無いので受け取った。そんな感じだった。俺は恋人という役割を与えられただけで、それから何も変わらなかった。だからあいつを愛してるかと尋ねられれば、迷いはしてもそれは違うと答えただろう。

いっそもう同じ部屋に住んでしまえと思わないでもなかったが、あいつに言わせりゃ散らかし魔な俺の性格と、2人で住むには狭すぎる部屋の広さを持ち出されれば、特に乗り気でもない同棲案を押し切る気概も無かったのだ。

つまりそれは、俺がどれだけ短慮で愚鈍だったかという証明に他ならない。


























Eli,Eli,Lema Sabachthani
























俺たちの関係はさぞ周囲から奇異なものに見えたことだろうがわざわざそれを指摘するような輩はいなかったし、俺たちは俺達で暗黙の了解みたいなのがあったから掘り起こしはしなかった。
スコルポスはいつだって俺と一緒にいた。俺から離れてるのは任務の時か、あいつがメガトロンの夜伽で呼び出された時くらいだった。

俺らはやはり特殊と云ってよかったのだろう。肩書きはあるものの俺とスコルポスに性的な干渉はなかったし、色事に疎い俺でさえも耳に入るほど有名なそれは、半ば義務化していたらしいメガトロンとあいつとの行為には立ち入りがたい何かがあった。

名ばかりは恋人といえど、やはりまだ俺にとってスコルポスの存在とは「世話の焼ける弟分」であり、如何に性欲を持て余そうがそんな対象には成りえなかったのだ。スコルポスからもそんな行為を持ちかけられたことはなく、やはりあいつは「頼れる兄貴分」としての俺を確保するために告白したのだろうなという思いが強かった。

溜まるものは溜まるのだから、捌け口は必要だ。それが奴らはたまたま、互いを相手としていた。それだけだ、そう思い込もうとしていた。

ガラでもないが、潜在的な何かを感じていたからだろう。常識的に考えればわかることだったが、俺は恐れており冷静な考えを放棄していたのだ。そこに触れては何か恐ろしいことが起こると。

心地よい、今の関係を壊したくはなかったのだ。


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