お題
□でたらめお題
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ぐじゅり
じゅく
ぐじゅ
じゅくり
《――ひっ》
赤味がかった紫色のそれが蠢く度、この身が感じる筈の無い怖気が全身を這い上がる。酷く、酷く気持ち悪い。否応無しに毛穴という毛穴が開く。いや、無理矢理にこじ開けられ、中にまであの不快にのたくるあれを捩じ込まれるような感覚。
じゅぷ
ぐちゃ
ぬちゃ
ずずず、ずず
じゅぷん
《ひぃいぃぃ》
ぐじゅぐじゅと湿った音を立て、それはバネの様にしなり、たわみ、時にはびちびちと壁の上を跳ねる。一つ一つの太さは指程のものから手首大のものまであり、それが限られた視界の中を縦横無尽に暴れまわる。
それはなにかの集合体の様で、赤い両の目を核とし絶えず動きまわっている。一本一本が意思を持っているとしか思えないその動きが、絶えず発せられる湿った水音が、生物的な、本能的な凄まじい恐怖心を呼び起こす。汚らわしく、グロテスクで、醜怪。いや、いや、いや、どんな言葉もこれを形容するには美しすぎる表現だろう。あれは、あれはまるで…この世の全ての不浄を身に纏っているかのような
蟲の様にも、見える。しかし、人よりも遥かに巨大で周囲の木々さえ楽々とへし折りものともしない。そんな蟲が…いや、これほどまでに卑しくおぞましい生物が、存在してなるものか。
しかしそんな事を思考できたのも、狂った蚯蚓のようなそれがこちらに伸ばされた、その瞬間までだった。
《ひいっ、っあ、あ、あああぁあああああっ!!》
絶叫が、知らず喉から迸った。
「…変な色したミートスパゲッティーみたいな…?」
「ダイじょ、ブ?」
男が何か叫んだ。しかしあれは触手を束ねて構成されている様子のその腕を物凄い速度で動かし、全くスピードを緩める気配は無い。寧ろ加速したようにさえ見えた。獣じみたそれなのに、腕をつき地を駆ける様が狂ったヒトの様にも見えて、そんな考えにまた総毛立った、次の瞬間。
カンッ!
――――キィィイィィイイイイイーー!!
《――――っっっ!》
放たれた矢がその赤眼に刺さった瞬間、響いたのは耳を劈くような高音。聞いた耳が犯される様な。一瞬にして、鳥肌どころではなく全身に冷水を掛けられたかのように錯覚させる、その悪魔的な音、嘶きにも似た苦痛の声。
蠢いていた触手が瞬間、放射状に伸び空を刺す。苦しみ悶えるようにのたうっていたのは数瞬だけで、その蛭にも似た触手が獲物を追う。そして捕まえた。右手が、あのびくびくと収縮する触手に、包まれ、腕が、じゅるじゅると音を立てるあれ、に、巻、き付かれ、て、
「うっ」
小さな呻き声。あれに触れられた事に対する反応にしては、小さ過ぎる程小さなリアクション。だがしかし、それは起爆剤には充分だった
《っうわぁあぁぁあぁぁあああああぁぁ!!》
「あーあー…んなに怖ぇなら見なきゃいいのに」
「…スタ、すくりーむ?だいじょ、ぶ?」
《うわぁぁ…》
「ほっとけって」
「で、モ、すこるぽス――」
「あ、ほら迎えが来たぜオラ――おーいランページーー!!」
「ア」
「じゃあな〜」
「う、ん。バイバイ」
「…おーい…スタースクリーム?だいじょーぶかー?」
《ううぅ…蚯蚓が…み、みみずが…》
「…そんなに怖かったのか…」
《お、俺様の腕が…し、しなやかで美しく優美でゴージャスな美しい俺様の…!俺様の美しい腕がぁぁぁぁ…!》
「…あーもーうるっせえなぁオラ…帰るぞ」
《う…ううう…俺様の美しい腕…》
「…お前ってマジ映画に感情移入しすぎだしー…」
いくら凄い映画だからって、そのハマりっぷりはヤバイだろ
「…そんなにあーゆうヤツ、駄目だったのか…?」
面白いのになぁ、
も〇〇け姫…
《腕が…腕が…》
「はぁ…あ、つかゴージャスな腕って何なんだよ?」
《あああ俺様の…俺様の腕が…!》
了
足の無いものというか、触手系駄目そうだなーと。