お題

□動詞系お題
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「なんでですかぁっ…!」

大きな瞳から、ぼろぼろと涙が零れている。目の前で泣きじゃくる、実際より小さく見える肩。

手に入れるためにどれほど手を尽くしたのかなど、きっと目の前の男にはわからない。

「んで…っ!なんで、俺なんですかぁっ」

長い時間をかけた。この瞬間のために。時間も手間もどんな資材も惜しまなかった。全てを手に入れるために。

今この時、たったこれだけを吐露させることにどれだけ費やしたか。

長くかかった。もどかしかった。まったく相手が悪かった。

たったこれだけを信じさせるのに、長らくかかった。やっと言えるのだ、

「気づくのが遅いんだ、バカもん」

それはけして伝わらないのかもしれないが

「大体なぁ、俺様が貴様の体だけ目当てなんだったら、お前なんかとっくに壊れとるぞ」

それはそれで構わない。もう離すつもりもないのだから。

「欲深でな、俺様は。」

抱きしめてしまうと、顔が見えない。迷ったが、抱き寄せた体は暖かい。心地が良い。

「体だけじゃなく、お前の心も全部欲しいんだ…スコルポス」

やっと言える。


「…お前が好きだ、スコルポス…愛してる」

俺様が、出来ることは全てやった。こいつの答えがどうあれ、手放すつもりは毛頭無い。

「お前はどうだ」

出来ることには全力を尽くした。自由意思より何より優先すべきは、たった一つの欲求。こいつが側にいればいい。

全力を尽くした。もう離せない。ただ、俺様からの告白を、こいつは受け止めることができるのだろうか。

「スコルポス…」

泣くばかりでは、わからない。

たった一つの仕草でいい。どんなに小さな声でもいい。示してくれれば、見逃さない、だから。

拒否でも合意でも構わない。今はただ、答えが欲しい。

お前が壊れてしまう前に。くだらなくて曖昧な、無意味な答えがただ、欲しい。






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