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「牽牛様〜起きてくださいオラー」
七夕ですよー?
天の川のほとりにて。紆余曲折といくらかの不可抗力で、悲しくも引き離された牽牛と織女。
泳ぎまたは泳がせ渡り越えるにはあまりにも深く広すぎる天の川の流れ。恋い焦がれあう二人が一年に一度の逢瀬しか許されない、あまりにも辛すぎる裁きのもと
牽牛と織女が元気に暮らしておりました。
『道行(みちゆき)』
今は昔、織女と共にこの天の川の在る銀河系を、ひいては宇宙全体を手中に収める計画をすんでの処で挫かれた牽牛、またの名を破壊大帝メガトロン。
彼は今現在、星帝と、彼と同じくこちらがわの岸に住んでいるゴリラ(あの男にしてやられたのでこんな所にいるわけです)に隠れてコツコツ悪事を働くことに余年の無い日々を送っていました。
たかが牛飼いの分際で破壊大帝とは大仰ですが、所詮自称なので捨て置きましょう。
むしろ闘牛大帝ではないかと巷では噂されていますが、本人が酷く傷つい(たと言って)て辺りを破壊し尽くすのでやはり捨て置きましょう。
そうです。あくまで彼は牛飼いです。たとえ田畑を耕すために授けられた牛を改造して改良して色々内蔵して調教して、畑に地雷やその他もろもろの危険な香りのする「ナニカ」を仕込んでいても。
たとえ家屋の周辺に大量の銃火器類が巧妙に偽装され隠されていても、あくまで彼は牛飼いです。ただちょっと征服欲が強くてオールマイティーなだけなのです。
きっと彼が大々的に動き出すのももうすぐでしょうが、これはまた別の話でございます
閑話休題
さて、口に出しては言えないような事を日々画策しておられる闘…いえ破壊大帝な牽牛ですが、やはり愛する織女・ナビ子ちゃんと引き離され過ごす毎日が堪えます。
そんなときは岸のこちら側の部下いえ飲み仲間と酒宴を催したり、暇つぶしに作ってみたら案外いいカンジになっちゃった星間通信送受話装置で織女とお喋りです。
牽牛は凝り性だったのでホログラム機能まで付けてしまいました。(ちなみに星帝には秘密ですので密告しないでください)
そんなこんなで日々の暮らしをエンジョイしてらっしゃる牽牛ですが、やはり年に一度のこの七夕の日は殊更楽しみにしていたようで。
ついつい昨夜は夜遅くまでナビ子ちゃんと通信しすぎてしまい、うっかり寝不足です。
というわけでもうすっかり約束の刻限だというのに眠りこけていた牽牛でしたがしかし、ありがたくもそんな彼を揺り起こす者がいます。
「牽牛様ー。また眠ってるんですかオラ…?たしか去年も一昨年も…」
「…む」
牽牛メガトロンが呻きます。彼がここに来たということは、また今年も雨だったのでしょう。
その考えに至ると、自分を揺り起こす彼に見えないようににやりと笑い、今の今まで眠りこけていた人とは思えないほどの機敏さで立ち上がります。