彩雲国物語 夢小説
□Short Story
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勘違い
(楸瑛×絳攸×静蘭)
「絳攸どこに行くんだい?」
答えは分かっているが、念のため楸瑛は目の前を歩く友に聞いた。
「決まってるだろう!あのバカ王の所だ!」
当たり前の質問をされ絳攸は少しむっとした。
想像通りの返事が返って来た為、楸瑛はこの日何度目かの溜め息を吐く。
「はぁ…。そっちは廁だよ…」
友の矜持をなるべく傷つけまいと、絳攸に先頭を譲り任せて歩いて来たが――
はっきり言って限界である。
このままでは日が暮れてしまう…。
「くっ…。用を足してから行こうと思っていた所だ!」
「え?君…さっき行ったばかり…」
「えぇい、煩い!」
顔を真っ赤にしながらあたり散らす様は、鉄壁の理性の欠片も見当たらない。
「はいはい。主上の所へ行くよ」
友人の世話をするのも随分と馴れた。
楸瑛は適当に宥めると先を急ぐ。
(絳攸…。君は、親に捨てられたんじゃなくて、本当は迷って帰れなくなっただけじゃ…?)
歩きながら少し考えていると絳攸がいないことに気付く。
何気なく後ろを振り返ると――
今、まさに女性側の廁に入って行こうとする絳攸の姿が目に入り唖然とした。
――と同時に身体が瞬時に動き慌てて止めに走る。
「絳攸…そっちは――」
遠くにいる楸瑛の声も届くことなく絳攸は扉を開け何やらごそごそしている。
楸瑛は扉が開いてしまったことに舌打ち、全速力で止めに向かう。
「…絳攸殿?」
突然、横から聞き覚えのある声がし、絳攸は角から出てきた人物に向き直った。
見ると静蘭が立っていた。
「どうなさったんですか?こんな所で…」
「いや、衣が木屑に引っ掛かってな…」
――突然開いた扉、向きを変えた友人。
全速力で走っている自分。
急に止まろうとしても、勢いを増した走りが止まることはない。
楸瑛はそのまま全速力で廁の中に入ってしまった。
あまりの速さに唖然とする二人。
「な…なんというか…藍将軍は…そこまで廁に…」
「さっき行ったはずなんだが…」
廁に全速力で飛び込んでしまった楸瑛は暫く二人と顔を合わせようとはしなかった。
せめてもの救いは、此処が、男性用だったことだろう。
どうやら勘違いをしていたらしい。
廁の中で、もう絳攸の面倒は見ないと心に固く決めた楸瑛だった。
***
なんか意味不明なSSになりました…。
本当は女子廁(トイレ)にするつもりだったんですが、(珠翠に見られるというオチで…(笑))絳攸まで不審者になってしまうので(楸瑛だけにしたいという…(笑))やめました。
結局、楸瑛の勘違いというへたれな落ちです。
てか静蘭!
君ひょこひょこ出過ぎだから!(笑)
この前にあるSSの、へたれ静蘭が向かった先は此処とか、繋がってたら笑えます。
この後に、
「そこまで(トイレを)我慢なさらなくても…」
呆れた静蘭と絳攸がいたらいい。
全ては絳攸…、君のせいだよ☆みたいな(笑)
2008.06.30 由良
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