ポケモン
□ゲンリオ
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事の始まりは、二日前に届いた一通の手紙だった。
長い旅の途中、疲れた身体とポケモンを癒すため、私は近場の町のポケモンセンターに居た。
朝食を摂り旅立とうとしたところ、ジョーイさんに一通の手紙を渡されたのだった。
「ナナカマド博士から昨夜届いたんです」
「ナナカマド博士から?」
シンオウ地方を代表する有名な研究者だ。
旅をしている関係上、知り合いは必然的に増えていく。
彼も旅立つときに知り合った一人であった。
周囲を常に冷静な目で見つめ、厳格な態度で対人するその姿勢は称賛に値するものだ、と常々思っていた。
博士には旅立つ前に、大体の行き先を報告してある。だから手紙自体にはなんの不可思議もないのだが、『ナナカマド博士から』というのが、ゲンは気になっていた。
手にした手紙をひっくり返してみると、裏には確かに『ナナカマド』とだけ記してあった。
手紙を開けて中にある便箋を手にする。そこにはこうあった。
『ゲン、君に頼みたいことがある。近々、研究所に寄ってもらいたい。詳しいことはそこで話そう。ナナカマド』
「私に頼み事?何事だろうか」
博士とは旅の最中に定期的な報告をするだけで、それ以外では特別、連絡は取り合っていなかった。
これは何かあったと思ったほうが良いのだろうか。
原因を思索してみるが見当がつかない。
封筒の中を覗いてみたが便箋以外の物は特に入ってはいなかった。
「とりあえず…研究所を目指そうか」
誰にとはなく、自分自身に自答してみる。
幸いにもここからナナカマド博士のいる研究所までは数日もあれば着くだろう距離だ。
ゲンはピジョットが入っているモンスターボールに手をかけ、ポケモンセンターの外に出た。
日光がゲンの目に突き刺さる。
空は綺麗過ぎるほどの蒼色だった。