ポケモン

□シゲサト
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ヒカリが久しぶりに帰省すると言い出した。


何でも急用ができたらしく、ヒカリの母が帰って来てほしいと言っていたらしい。
こっちにしてみれば、シンオウ地方の旅も一区切りがついたところだったので、俺もタケシも一時、帰省することになった。
ママに帰省の連絡をするために近くの町のポケモンセンターに寄り、そして今、公衆電話の前に立っている。

帰る前に連絡するのは旅を始めた頃からの、ママと俺との約束の一つだった。

ヒカリとタケシも各々に自宅に電話しているようだ。二人とも、顔が嬉しそうに緩んでいる。

受話器を取り、自宅の番号を押した。
今はまだ、真っ暗なこの画面に、これから映るママの笑顔を期待しながら──。






「本当に?本当に帰って来るのね?」

「うん。ヒカリが一度戻るって言っててそれなら俺たちも、と思ってさ」

「そう。楽しみね」

にこっと笑ったママの顔を久しぶりに見た気がした。
ママの後ろに見えるマサラの穏やかな風景も、とても懐かしかった。


「あっ!そういえばオーキド博士が貴方に用事があるって仰ってたわ。電話してみなさいな」

「博士が?」

「えぇ。それじゃ、ママは夕飯の用意をするから。気をつけて帰ってくるのよ、サトシ」

「分かってるよ。じゃあね、ママ」


ブツン、と無機質な音が鳴り、ママの残像を残したまま画面が消えた。
そして、もう一度。
今度はオーキド博士の研究所へのボタンを押した。

博士には新しい町に着く度に定期的に連絡をしていた。
つい二三週間前にも一度、連絡を取っていたはずだが、その時には俺への『用事』なんてものは聞かされていなかったはずだ。


何なのか、見当もつかないが、取り敢えず博士と話せば分かるだろうと、右耳にあてた受話器からの取り次ぎの音を聞きながら、ぼんやりと考えていた。
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